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残留農薬
   健康を維持する上で野菜や果物はなるべく意識して摂りたいものですが、同時に曝露されてしまう残留農薬のことが気になるところです。より安心して農作物を摂取するためにも、残留農薬の実態についてご紹介します。
 
そもそも農薬とは
 農薬は法律の上では農薬取締法により「農作物を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルスの防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる植物成長調整剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。」と定義されています。安全性を図るため、農薬はこの法律により製造、輸入から販売、そして使用に至る全ての過程で厳しく規制されています。
 
残留農薬の基準値
 食品衛生法での残留農薬基準は、生涯にわたって摂取した場合でも健康に影響を及ぼさない量で収まるよう、適正な農薬使用に基づく残留試験結果と複数の食品から毎日摂取することを考慮して設定されています。
 基準値が設定されていないものでも、一定量を超えて農薬などが残留する食品の販売を原則禁止とするポジティブリスト制度が採用されます。また、基準値が設定されていない食品に登録のある農薬の基準値超過や残留基準が設定されていない無登録農薬が一律基準(0.01ppm、食品1kgあたりに農薬などが0.01mg含まれる量)を超えて検出された場合にも、規制の対象となります。
 
摂取量を減らすには
 農薬などは野菜、果物の表面や皮、玄米のぬか、胚芽部分に多く残留しています。そのため、剥皮や水による洗い落とし、精米などである程度除去が可能です。しかしながら、アトラジンやトリフルラリンなどの土壌に残留しやすい農薬やネオニコチノイド系農薬などの浸透性の高い農薬では、さほど効果は期待できないようです。加工や調理を経て検出されるものも多く、ほうれん草のイソキサチオンでは、調理後も50%以上残存したという報告があります。

 
作物別残留農薬の実態
 福岡県保健環境研究所の報告によると、福岡県内に流通する農産物における残留農薬の検出率は40%弱となっています。検出率の高い農産物は玄米や葉野菜類、果実類で、検出率の低い農産物はきのこ類や根菜類のほか、キャベツ、かぼちゃとなっています。
 国内だけでなく輸入農産物も気になるところで、アメリカのNPO機関「EWG」によれば、残留農薬の多い農産物のランキング1位はいちご、2位はほうれん草となっています。その他、ランキング上位には葉野菜や果実の名前が並んでおり、福岡県保健環境研究所の報告とほぼ一致しています。
 
「無農薬」「有機」は安全?
 「無農薬」という言葉を見れば安心する人も多いかもしれませんが、特別栽培農産物に係る表示ガイドラインが制定された現在では、「無農薬」や「減農薬」という言葉を表示に用いることは禁止されています。
 一方、「有機」や「オーガニック」の表示は有機JAS規格を満たすもののみに認められており、無農薬や減農薬より安全といえるでしょう。しかし、2017年に植物工場で栽培された農薬未使用と表示のあるベビーリーフから基準値の17倍のピレトリンが検出され、自主回収されています。ピレトリンは除虫菊から抽出された天然の殺虫剤で、有機農産物のJAS規格で使用可能な農薬に含まれていますが、適切な使用量と回数を守らなければ天然由来の成分でもやはり問題となります。
 適切に使用された農薬が基準値を超えることはなく、残留農薬基準に適合していると確認された食品であれば、有機栽培でなくとも過度に恐れる必要はありません。



こらぼ2021年冬号より抜粋