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カビについて
カビとは
 カビとは細菌(バクテリア)やウイルスと同じく微生物の仲間であり,微生物学的には「真菌類」と呼ばれ、多数の菌糸と、菌糸の発育によって形成される胞子から構成されています。

 私たちが住んでいる日本は、温帯地方の島国で気候が温暖多湿のために、多くの種類のカビが生えやすい環境が整っています。そのため、昔から有効なコウジカビ(麹菌)を味噌や醤油などに活用して親しんできた歴史があり、さまざまな種類の発酵食品を食べてきました。一方で、カビは食品中で増殖して異味、異臭などの品質低下を引き起こし、種類によっては発がん性のカビ毒を産生します。さらに、カビは健康面においてアレルギー喘息、水虫などの原因となり、環境面では住居の浴室、台所、じゅうたんなどにもよく発育してそれらを劣化させます。
 
 このように私たちにとって、カビは有益と有害の両面をもっています。
 
カビの発育条件
  1.酸素
    カビは酸素のあるところでのみ発育します。包装された菓子などに脱酸素剤が入っているのは、菓子の酸化防止と同時に、カビの発育を抑制する目的もあります。
  2.温度
    一般にカビの発育可能温度は5〜45℃で、冷蔵庫でも徐々に増殖します。しかし、最適温度は20℃前後であるため、この温度帯を避けることで、ある程度の発育を抑制できます。
  3.水分
    一般には水分含量が高いほど(80%以上)よく発育します。細菌が約50%以下の水分含量で発育できないのに対し、カビは、15〜50%程度でも発育します。種類によっては乾燥穀類、小麦粉でも発育する場合があります。
  4.pH濃度
    カビの多くはpH3〜9で発育しやすく、よく発育するのはpH4〜6の範囲で、弱酸性を好むものが多いようです。
  5.栄養分
    カビの発育には栄養分が必要です。食品のカビは食品成分そのものが栄養となるためカビが発育すればするほど食品は劣化します。
 
カビが生えてしまった食品はカビだけを取り除けば食べても大丈夫?
 実はカビを取り除いても、基本的に食べてはいけません。食品に付くカビの種類は周囲の環境によって異なる場合も多く、専門家ですら、すぐにカビの特定をするのは難しいと言われています。そして、どの程度まで食品の内部に侵食しているかは容易に判断できない上、中には目に見えないカビもあります。食品の表面にカビが発生した場合でも、すでに内部にまで菌糸が成長していると考えられます。菌糸と胞子の状態で存在しているため、同じ袋に入っている食品はカビが生えていなくても、カビの菌糸と胞子が付着しているのです。

加熱すれば食べても大丈夫?
 加熱することでカビが死んで安全に食べることが出来ると思われるかもしれませんが、これもやはり食べてはいけません。
 
 数万種類もあるとされるカビの中には、人や動物に対して有害な成分である「カビ毒」を出すものがあります。カビ毒としては現在100種類以上が報告されています。加熱することで菌は死んでも、一旦カビ毒が作られてしまうと、カビ毒は熱に対して非常に耐性が高く、通常の調理や加工の温度(100〜210℃)や時間(60分以内)では、完全に分解することができません。

 おいしいものはおいしいうちに。皆さんも食品の保管状態を見直し、食品を無駄なく食べることを心掛けてみてはいかがでしょうか?
 
写真. いか明太詰め(アオカビ)
 
  緑色の変色が見られる 表面拡大図 発生したコロニー 顕微鏡観察画像
 


こらぼ2018年春号より抜粋