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蒸発残留物

◆概要
 蒸発残留物とは水の中に浮遊、または溶解している物質を蒸発乾固して得られる総量のことです。水の中に含まれている物質の総量を求めるために一定量の水を蒸発皿にとり、これを蒸発後秤量してその残留物の重さを求めることから、蒸発残留物といわれます。
 水道水の蒸発残留物の主な成分はミネラルで、カルシウム、マグネシウム、ケイ酸、ナトリウム、カリウムなどの塩類や有機物です。ミネラルは味を左右するため、ほどよく含まれると水の味がまろやかになりますが、蒸発残留物が500mg/L以上になると味を生じ、渋味や苦味が増し、水の味が悪くなります。また、鉄管類や給水装置に対して腐食性を増したり、スケールを生じさせたりします。このような観点から水道水の水質基準では、蒸発残留物500mg/L以下と定められています。
 おいしい水研究会(昭和59年厚生省設置)では、蒸発残留物においてのおいしい水の水質条件として30〜200mg/Lを目標値としています。一般に水道水では200mg/L以下で、多くても300mg/Lを超えることはほとんどありません。また、蒸発残留物の中でも溶解性のものは、基準値を超えた場合でも健康への影響はほとんど問題ありません。
 また、海水の影響を受ける地下水などで高い値を示すことがあります。自然に由来するもののほか、下水放流水、降雨放流水、工場排水などが主な排出源です。
 
◆測定方法
 蒸発残留物の測定方法は、重量法のみです。
 
◆健康影響・利水障害
 蒸発残留物は衛生上の障害は判然としませんが、蒸発残留物の溶解物質には、衛生上意義のあるものもあります。多量であれば味を感じることもあるので、これらの点を考慮して水道水質基準が定められています。
 蒸発残留物は、蒸発している間に重炭酸塩など成分の種類によっては改変を受けるものもありますので、その場合、その分を補正して計算したものが、総溶解固形分(TDS)です。
 WHOガイドラインでは、TDS濃度が1000mg/Lを超すと、味気なく、まずいと感じられています。
 
◆浄水方法
 ナノろ過、イオン交換、石灰軟化による除去方法があります。
 
※スケール:水中のカルシウムやマグネシウムなどが析出したもの



こらぼ2023年夏号より抜粋
CRC食品環境衛生研究所