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塩化物イオン

◆概要
 塩化物イオンは自然界に広く存在し、その多くは地質や海水に由来します。とくに海水中には多量に存在し、約19.9g/Lもの塩化物イオンが含まれています。また、工場、家庭排水にも 塩化物イオンが多く含まれており、これらの水が混入することにより、水道水中の塩化物イオン濃度が増加することが少なくありません。塩化物イオンは、量の多少よりもむしろ相対的変動、例えば突如増加する方が汚染を示す可能性が高いです。
 水道水における塩化物イオンは、健康への影響に関することよりも味に関係する項目として測定意義があります。塩化物イオンの水道水質基準では、味覚の観点から200mg/L以下と定められています。この基準値は、一般の人が塩味を感じない程度のレベルとして定められています。この基準値を超えると、塩味を感じ始めます。また、飲料水からの摂取量は食品由来と比較すると、極めて少量です。
 また、塩化物イオン濃度の高い水は金属を腐食させるため、低い方が望ましいとされています。
 
◆測定方法
 塩化物イオンは、イオンクロマトグラフ法または硝酸銀滴定法で測定します。イオンクロマトグラフ法は分析操作が簡単で高感度であるうえ、滴定法のように有害な試薬を必要とせず、他のイオンとの一斉分析も可能であるなど利点があります。硝酸銀滴定法は分析方法が簡単で、「モール法」として古くから一般的に広く用いられてきました。
 
◆処理技術
 塩化物イオンは通常の浄水方法では除去することができませんが、イオン交換や膜ろ過による除去性があります。
 
◆健康被害
 塩化物イオンは高濃度に含まれていると、味覚を損なう原因となります。また、4000mg/L以上で心臓病、腎臓病患者に有害とされています。
 ※気象庁編:海洋観測指針,日本気象協会,1990.



こらぼ2023年冬号より抜粋
CRC食品環境衛生研究所