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自然界にほとんど存在しない六価クロム化合物

◆概要
 クロムは主に岩石、土壌火山灰およびガス中に存在している金属であり、二価、三価、六価のものが存在します。二価のものは不安定で三価に酸化されるため、三価クロムおよび六価クロムが最も安定した酸化状態と言われています。三価クロムは人の微量必須元素となっており、さまざな食品に含まれていますが、六価クロムは自然界にはほとんど存在せず、主に工業的な要因で発生し、飲用水などに混入することがあります。
 とくに毒性が強い六価クロムは、水に溶けると重クロム酸、クロム酸などを生成し、六価クロムはその強力な酸化力のため、酸化剤としてメッキ(クロム酸鉄)・染料・皮革・織物の媒染剤(重クロム酸塩)など、さまざまな工業に使用されています。六価クロムの水道法の水質基準は0.02mg/L以下と定められています。
 
◆健康影響
 クロムは微量必須元素とされており、糖質、脂肪の代謝、タンパク合成に関与する一方、タンパク分解酵素の一成分となっています。血液中ではトランスフェリンと結合しています。腸管吸収率は低く、肺や皮膚、とくに気管からは吸収されやすく、体内に吸収されると還元され三価になり、大部分は尿から排泄され、一部は肝臓や腎臓に蓄積されます。
 強い酸化作用から、六価クロムが皮膚や粘膜に付着した状態を放置すると、皮膚炎や腫瘍の原因となります。六価クロム粉塵の長期吸入により皮膚・呼吸器・肝臓などのさまざまな障害、肺がんや鼻中隔穿孔、消化器系のがんの原因になります。
 
◆浄水方法
 通常の浄水方法のうち、凝集沈殿+ろ過による除去性があります。逆浸透およびイオン交換により除去でき、または亜硫酸水素ナトリウムなどで還元し、三価クロムにした後で、アルカリ剤を加え沈殿分解する還元沈殿法が用いられています。



こらぼ2022年秋号より抜粋
CRC食品環境衛生研究所