◆硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素
硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の汚染源は窒素肥料、家畜の糞尿、腐敗した動植物、生活排水、陸上処分された下水汚泥等に由来します。硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素は、水中の硝酸塩中の窒素と、亜硝酸塩中の窒素との合計量です。
水道法の水質基準は10mg/L以下と定められています。飲料水などを通して摂取した硝酸態窒素は、消化管から速やかに吸収され、血液、尿、唾液中に移行しますが、一部は消化管内の微生物によって還元され亜硝酸態窒素となります。血液中に移行した亜硝酸態窒素は、ヘモグロビンと反応し、酸素運搬能のないメトヘモグロビンを生成し、メトヘモグロビン血症となりチアノーゼ症状を呈します。硝酸態窒素の還元は、胃内pHが2〜3の成人ではほとんど起こりませんが、胃酸分泌が少ない乳幼児は微生物による硝酸態窒素の還元が起きやすく、メトヘモグロビン血症になりやすくなります。
また、亜硝酸態窒素は、胃内で食物中の2級アミンなどと反応して発がん性が示唆されるN-ニトロソ化合物を生成するおそれがあります。浄水方法として、生物処理、イオン交換、逆浸透膜法により除去できます。
◆亜硝酸態窒素
亜硝酸態窒素とは、水中に含まれる亜硝酸塩中の窒素をいいます。亜硝酸態窒素は、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素の汚染源と同じ窒素肥料、腐敗した動植物、家庭排水、下水等に由来します。これらに含まれる窒素化合物が、水や土壌中で化学的・微生物的に酸化及び還元を受けて生成します。
亜硝酸態窒素については、これまで硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素10mg/L以下の基準が定められていましたが、食品安全委員会の食品健康影響評価結果から、亜硝酸態窒素は単独では低い濃度でも影響が観察されたため、平成26年度から亜硝酸態窒素のみの基準値が別に定められることとなりました。亜硝酸態窒素の基準値は0.04mg/L以下です。
表.乳児と成人の亜硝酸態窒素の生成メカニズムの違い |
起因 |
乳児 |
成人 |
亜硝酸態窒素の還元 |
硝酸塩の還元が進み、亜硝酸塩が多く生成される
(胃酸pH約4強〜中性) |
硝酸塩の還元は少ない
(胃酸pH1〜5) |
硝酸還元細菌 |
増殖しやすい |
活動できない |
ヘモグロビンの存在 |
胎児性ヘモグロビン(月齢2〜3カ月ではこの形で存在する)は
非常に酸化されやすい |
酸化されやすい |
メトヘモグロビン還元酵素の存在 |
少ない
(メトヘモグロビンをヘモグロビンに戻す力が弱い) |
還元酵素あり |
メトヘモグロビン血症 |
起こりやすい |
起こりにくい |
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