TOP > 気になる「水」「食」「大気」のはなし > 異物検査  
異物検査
   市販の食品やお弁当・惣菜などを購入した際に、食品に混入した異物を見つけた経験はありませんか。
 
 厚生労働省が、保健所を設置している142自治体に2014年4月~2016年11月に対応した食品の異物混入事例を尋ねたところ、127自治体から回答があり、4519件が業者の製造過程で異物が混入したとみられることが判明しました。そのうち健康被害は236件確認されています。厚労省は、この結果を踏まえ、食品販売業者の異物混入対策を強化しています。
 
 異物とは、本来その食品に入ってはいけないもので、目に見えるものでは毛髪や虫、植物、繊維、原料由来の物質(野菜など)、プラスチック、金属、塗料片、変色、カビ、骨、血痕など多種多様です。
 
 食品の異物混入は、食品衛生法第6条4号でも規制され、「食品又は添加物で不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるものは、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は、販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない」と定められています。
 
 また、製造物責任法(PL法)でも、消費者からの異物混入問題の問い合わせに対して、混入した異物が何であったかを倫理的に説明すると同時に、その原因を明確にするように定められています。場合によっては、商品の回収や販売の停止につながることもあります。
 
異物の有害性
 食品の異物では、プラスチックや金属のように、明らかに外部から混入した異物以外に、魚介類や食肉中の骨や軟骨、野菜を使用した惣菜中の植物片など、原材料である食品の硬い部分が異物として認識される場合もあります。また、食品に含まれるアミノ酸や糖類、食品成分とカルシウムなどの化合物が析出する場合もあります。銀歯や樹脂製の歯科材料、歯の欠片なども比較的多く認められます。異物検査だけでは混入物を食べて害がないか判断することは難しいですが、検査によって食材由来の物質である可能性が高いと分かれば、消費者の不安も解消されるかもしれません。
 
異物検査について
 異物検査とは、顕微鏡観察や数種類の定性試験、有機物分析や無機物分析など、試料に適した分析方法で異物が何であるかを同定していく検査です。精密な分析装置を使用することで、プラスチックの種類や金属の元素組成を調べることができます。しかし、何に使われていたプラスチック片なのか、どのような製品に使われていた金属片なのかを突き止めるのは難しいのが現状です。混入が疑われる比較品や異物が見つかった状況など、詳細な情報も検査の助けとなります。
 
 異物検査の現場には、食品の異物として、プラスチックや金属、髪の毛、昆虫、カビ、石など、さなざまなものが届けられます。食品を取り扱う企業は、異物の混入防止のための対策を講じていますが、完全に防ぐことは困難です。異物がどのような物質であるかを突き止めることは、混入経路の解明や再発防止のための第一歩として必要不可欠です。
 
レンコンとタケノコを煮込んだ時のタケノコの変色
 
レンコンとともに煮込まれたタケノコは、全体が黒色に変色していた。 元素分析の結果、変色したタケノコには正常品では検出されなかった鉄が検出されたことから、タケノコの変色原因は、レンコンに多く含まれるタンニンと鉄が反応したタンニン鉄の付着と推定される。 レンコンは、ポリフェノールの一種であるタンニンを多く含み、鉄の包丁や鉄鍋または鉄分を含む水を使用して調理すると、鉄とタンニンが反応してタンニン鉄となり、黒く変色することが知られている。
変色したタケノコ
   
ちりめんの赤橙色部分  
赤橙色部分はちりめんの腹部に認められ、ちりめんの腹部から回収した赤橙色の物質の透過型顕微鏡観察では、甲殻類の一種と思われる生物が認められた。また、赤橙色の物質は、赤外吸収スペクトルがエビやカニの殻と類似し、主成分がタンパク質および多糖類(キチン質)であった。したがって、赤橙色部分はちりめんが捕食した甲殻類と推定される。
(1目盛 1mm) (1目盛 1mm) 赤橙の物質の透過型顕微鏡写真


こらぼ2019年秋号より抜粋