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異物検査
 今年に入り、食品の異物混入が相次いで報道されています。

 本来、その食品に入っていてはいけないものを異物と呼びます。異物には目に見えるものと目に見えないものがあります。目に見えるものとしては、毛髪、虫、植物、繊維、原料由来の物質( 野菜など)、プラスチック、金属、塗料片、変色、カビ、骨、血痕など多種多様な物質です。また、2013年に故意に行われた食品加工工場内での農薬混入事件などの目に見えない異物には、体に中毒症状を起こすものもあります。
 
 わが国では食品の異物混入件数をまとめていませんが、東京都では毎年、苦情件数の内訳を公開しています。
 
 2012年度の苦情件数は4867件で、そのうちの681件が「異物混入」でした。異物混入の内訳は、虫194件、寄生虫27件、鉱物性異物109件、動物性異物119件、合成樹脂類80件、木11件、紙11件、繊維18件、たばこ6件、絆創膏7件、その他99件となっています。
図.苦情食品総件数と異物混入食品の件数
 
 このように、製造者がどんなに食品への異物の混入に注意を払っていても、完全に防ぐことは難しいものです。しかし、次々に食品の異物混入のニュースが報道されると、消費者の「食の安全・安心」への関心はますます高まりを見せ、製造者へのクレーム件数は増加傾向にあります。
 
 製造物責任法(PL法)では、消費者からの混入異物の問合せに対して、混入した異物が何であったのかを論理的に説明すると同時に、その原因を明確にするように定められています。このため、異物の正体を迅速かつ正確に突き止め、消費者へ誠意ある対応をとることが重要です。
 

シー・アール・シー発刊の
「異物検査事例集−食品中の異物を中心として−」より一部抜粋

やきそば麺の黒色異物
  ■外観観察
   やきそば麺の「黒色異物」の外観写真を写真1、回収した「黒色異物」の拡大写真を写真2に示す。「黒色異物」は、昆虫の頭部や脚と思われる。約0.5〜1.5mmの微小な破片が含まれていた。
  ■結論
   やきそば麺に付着していた黒色異物は主成分がタンパク質であり、昆虫の頭部や脚と思われる微小な破片が観察されたことから、昆虫の一部であった。
 
写真1 (1目盛 0.5mm)
 
写真2 (1目盛 0.5mm)
 
  豆腐の付着物
  ■外観観察
   豆腐の「付着異物」の外観写真および拡大写真を写真1(A)(B)に、取り出した「付着異物」の拡大写真を写真2に、「付着異物」を切断した断面の拡大写真を写真3に示す。「付着異物」は、長さが約2.5mmで、豆腐に埋まっていた。「付着異物」は、内部も外側と同質な物質であり、水分を含み軟らかかった。
  ■結論
   豆腐に付着していた異物は、主成分がフィチン酸カルシウムであった。フィチン酸は大豆などの豆類や穀類などに多く含まれる成分で、カルシウムやマグネシウムと結合して水に不溶性の物質となる。
 付着異物は、大豆由来のフィチン酸とカルシウムが結合して析出した可能性が考えられる。
 
写真1(A)
 
写真1(B) (1目盛 0.5mm)
 
写真2 (1目盛 0.5mm)
 
写真3 (1目盛 0.5mm)


こらぼ2015年春号より抜粋