日本は、蛇口から出た水道水をそのまま飲むことができる世界でも数少ない国のひとつです。 日本の水道水は、厚生労働省令によって定められた水道法に基づいて51項目の検査が義務付けられ、水道水質基準が守られています。このように、蛇口をひねれば安くて安全な水が手に入るのにもかかわらず、ミネラルウォーターの国内生産量は年々増加し、スーパーやコンビニエンスストアでは、さまざまな種類のミネラルウォーターを手に取ることができます。
ミネラルウォーター類の分類
ミネラルウォーター類は、農林水産省の食品流通局長通達の品質表示ガイドラインにより、品名が「ナチュラルウォーター」、「ナチュラルミネラルウォーター」、「ミネラルウォーター」、「ボトルドウォーター(または飲用水)」の4種類に分類されています。 ミネラルウォーター類の4種類の分類の主な内容を、表1に示します。これらの品名は、容器または包装の見やすい箇所に表示するように定められていることから、市販されているミネラルウォーター類の表示ラベルを見れば、どのような原水から、どのようにして製造された水であるかを知ることができます。
ミネラルウォーター類の規格基準の改正
ミネラルウォーター類の安全性を確保するために、食品衛生法の「食品、添加物等の規格基準」の中で成分規格が定められています。ミネラルウォーター類の成分規格で規定する基準値は、製造工程における殺菌または除菌の有無によって区分けされ、平成30年7月に一部が改正されました。 食品衛生法では、原則としてミネラルウォーター類は殺菌又は除菌が必要であると規定され、主に日本の製品はこちらに該当します。 今回改正された物質の基準値は、表2・3の通りです。殺菌または除菌されたミネラルウォーター類の場合は、清涼飲料水の成分規格4項目およびミネラルウォーター類の成分規格39項目に適合しているか高感度な検査が実施されているため、市場に流通する製品は安心して飲むことができるのです。
硬水と軟水
ミネラルウォーターの「ミネラル(無機質)」は、5大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル)のひとつです。ミネラルウォーターは、製品によって溶け込んでいるミネラル類の量が異なり、カルシウムとマグネ シウムの合計含有量を指標とする硬度は、味や料理との相性に影響しています。日本の水はほとんどがカルシウムとマグネシウムの含有量が少ない軟水で、ヨーロッパや北米にはカルシウムとマグネシウムの含有量が多い硬水が多く存在します。ミネラルウォーターを購入するときに表示ラベルを確認して、自分に合った水を探してみてはいかがでしょうか?
表1.ミネラルウォーター類の品名の分類 |
名 称 |
原 水 |
処理方法 |
ナチュラルウォーター |
特定水源より採水された地下水 |
沈殿、ろ過、加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行わないもの |
ナチュラルミネラルウォーター |
特定水源より採水された地下水のうち、地表から浸透し、地下を移動中または地下に滞留中に地層中の無機塩類が溶解した地下水 |
ミネラルウォーター |
ナチュラルミネラルウォーターを原水としたもの |
沈殿、ろ過、加熱殺菌以外に、複数のナチュラルミネラルウォーターの混合やミネラル分の調整、ばっ気処理などが行われているもの |
ボトルドウォーター
(または飲用水) |
ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター以外のもの
(純水、蒸留水、河川の表流水、水道水) |
処理方法の限定なし |
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「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」平成2年3月30日農林水産省局通達 食流第1071号より参照
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表2.清涼飲料水の成分規格で規定する「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行わないもの」の基準値 |
物質名 |
改正後(mg/L) |
改正前(mg/L) |
亜鉛 |
基準値なし |
5以下 |
アンチモン |
0.005以下 |
基準値なし |
ヒ素 |
0.01以下 |
0.05以下 |
マンガン |
0.4以下 |
2以下 |
亜硝酸性窒素 |
0.04以下 |
基準値なし |
ホウ素 |
5以下 |
ホウ酸として30以下 |
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表3.清涼飲料水の成分規格で規定する「ミネラルウォーター類のうち殺菌又は除菌を行うもの」の基準値 |
物質名 |
改正後(mg/L) |
改正前(mg/L) |
亜鉛 |
基準値なし |
5以下 |
アンチモン |
0.005以下 |
基準値なし |
ヒ素 |
0.01以下 |
0.05以下 |
マンガン |
0.4以下 |
2以下 |
亜硝酸性窒素 |
0.04以下 |
基準値なし |
ホウ素 |
5以下 |
ホウ酸として30以下 |
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「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について(清涼飲料水の規格基準の一部改正)」
平成30年7月13日厚生労働省生食発0713第5号より引用 |