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井戸水
■井戸水の歴史
 昔から人は水のあるところに住居を構え、集落を作って繁栄してきました。水源として湧水や渓流を利用していましたが、やがて湧出量を増やしたりきれいな水を手に入れたりするために、湧口を広げて水を溜めるようになりました。
 日本で現存する最古の井戸として、御井神社の井戸(島根県)、法輪寺の井戸( 奈良県)、玉の井(鹿児島県)があげられます。

 井戸は大きく分けると堀井戸と掘抜井戸の2種類に分けられます。

 現在のような土木技術がないため、最初のうちは井戸を掘るといっても浅く掘り、湧水や河川の伏流水を利用できるようにした程度でした。しかし、地下水面が深くて掘り下げなければならないような場所では、直径十数メートルの大きなすり鉢形の穴を掘り、その縁のラセン状の道を降りて水を汲む階段式やすり鉢式、螺旋式などの方法が用いられました。この代表的なものがまいまいず井戸です。

 まいまいず井戸はすり鉢状の穴を掘り、その中心に堀井戸が作られています。これは東京都多摩北部地域から埼玉県西部に多く見られ、武蔵野台地で数多く掘られた井戸の一種です。「まいまい」とはカタツムリのことで、井戸の形がその殻に似ていることから「まいまいず井戸」と呼ばれています。東京都羽村市に残るまいまいず井戸は806〜810年に作られたといわれています。

■井戸水と細菌
 次に井戸水の中の細菌についてですが、一般的な水道水は浄水処理や塩素による殺菌処理がされているため、飲用として適合している水が供給されています。

 水道法では一般細菌数100個/mL、大腸菌が陰性【検出されないこと】が基準となっています。それに対して井戸水は地面を掘り、地下を流れる自然の水をくみ上げているので、当然そのような処理はされていません。井戸は雨水などが地面にしみ込み、地下を通っている水脈を探し出しそれを水源としています。この説明だけでもわかるように自然由来であるが故に、井戸水には細菌が多く含まれています。そのため、なるべく地表からの汚染の影響などを少なくするため、井戸を深く掘ったり ( 深井戸)、殺菌用の塩素の注入器などを設置したりするなどの対策を行います。しかし、自然水であるため細菌検出の可能性はゼロであるとは言い切れません。また、場合によっては水道法の基準を超える場合もあります。しかしながら、大切なことは細菌の検出に一喜一憂しないことです。実際に長く井戸水を飲まれている人でも、体調に何ら問題がないこともあります。

 井戸水を利用する方法としては、沸騰させてから飲む、飲用水ではなく食器などの洗浄水として利用する、庭の散水に使う、トイレなどの雑用水のみで使用するなど、その用途はさまざまです。

 現在、世界的な自然災害や感染症拡大などのニュースも多く聞かれ、健康面や衛生面の大切さが叫ばれていますが、自然の恵みである水なので、井戸水を使用する際は定期的な検査等をし、水質を確認したうえで上手に利用することこそ重要ではないでしょうか。

  井戸の構造
 

 



こらぼ2015年冬号より抜粋