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海水浴場の水質判定基準について
 “夏といえば海”ということで、この時期にしか楽しめない海水浴についてお話ししたいと思います。

 海水浴の起源は17世紀のヨーロッパで始まったとされており、当初の目的は温泉浴と同様に、レジャーというよりは医療の一つとして行われるものでした。日本では明治時代に湘南で始まったのが最初といわれています。

 当時の海水浴はあくまで健康の維持と回復を目的とした医療行為であり、医者に処方されて出かけるようなものだったようです。レジャーとして注目されるようになったのは、第二次大戦後、水着の種類が増えてからの話で、歴史はそう古くありません。

 当初は医療として行われていた海水浴ですが、実際、海水浴をすることで健康への効果はどういったものがあるのでしょうか?

 よく知られている効果として、海水による皮膚の洗浄効果と紫外線よる殺菌効果によりアトピー性皮膚炎をはじめとする、皮膚疾患に効果があるといわれています。アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚疾患の場合、黄色ブドウ球菌などの細菌が皮膚に付着しており、黄色ブドウ球菌などが減少することで皮膚疾患も改善すると考えられています。また、海水中に含まれるミネラル分が皮膚から浸透することによって、新陳代謝の促進、自律神経の調整、老廃物の排出、美肌効果なども期待できるといわれています。海水中のミネラルバランスは、母親の体内で胎児を育む羊水とほぼ同じであるといわれており、海水浴などでそれらを取り込むことは、人にとって最も自然に体調を整えることができるともいえます。

 海水の塩分濃度は測定の位置により一定ではありませんが、おおむね水分96.6%、塩分3.4%です。塩分の構成については塩化ナトリウム77.9%、塩化マグネシウム9.6%、硫酸マグネシウム6.1%、硫酸カルシウム4.0%、塩化カリウム2.1%となっています。

 海水浴場には水質判定基準が定められ、その判定結果から適合水質AA から不適まで5段階に区分されています。各海水浴場で毎年の海開き前に水質調査が行われ、その結果は公表されるようになっています。その項目は、ふん便性大腸菌群数、油膜の有無、COD(化学的酸素要求量)、透明度、放射性物質濃度です。

 福岡市の平成24年度海水浴場の水質調査は、シーズン前およびシーズン中に各2回、それぞれ午前と午後に実施されます。調査対象海水浴場は福岡市東区の国民休暇村、勝馬、志賀島、西区では大原、能古の5カ所です。その他の福岡県内のおもな海水浴場の水質判定結果は福岡県庁のホームページで確認できるようになっています。

 この夏、紫外線に注意しながら、レジャーとは違った視点で海水浴を楽しんでみるのも良いのではないでしょうか。

  <参考>判定基準(環境省通知による)
区分 ふん便性大腸菌群数 油膜の有無 COD 透明度
水質 AA 不検出
(検出限界2個/100mL)
油膜が認められない 2mg/L 以下 全透
(水深1m以上)
水質 A 100個/100mL 以下 油膜が認められない 2mg/L 以下 全透
(水深1m以上)
水質 B 400個/100mL 以下 常時は油膜が認められない 5mg/L 以下 水深1m未満
〜50cm以上
水質 C 1000個/100mL 以下 常時は油膜が認められない 8mg/L 以下 水深1m未満
〜50cm以上
不適 1000個/100mL
を超えるもの
常時油膜が認められる 8mg/L 超 50cm未満


こらぼ2012年夏号より抜粋