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質問 膵炎マーカーにはいろいろありますが、使い分けを教えてください。 |
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回答 膵臓は食べ物を消化・分解するいろいろな消化酵素を産生し、分泌しています。炭水化物を分解するアミラーゼ、脂肪を分解するリパーゼやホスホリパーゼA2(PLA2)、蛋白質を分解するトリプシンやエラスターゼ1などは膵酵素と呼ばれ、正常でも一部は血中に逸脱しています。膵炎や膵癌などの膵疾患の診断や経過観察には血中や尿中の膵酵素の濃度を測定します。 膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があります。急性膵炎は膵液に含まれる消化酵素が膵臓自体を消化(自己消化)し、組織が壊死する病気です。成因にはアルコール、胆石、特発性の他、薬剤、高脂血症、膵癌などがあります。一方、慢性膵炎は長年にわたって炎症を繰り返しているうちに徐々に膵臓細胞が破壊され、線維化して機能が低下していく病気です。 多くの場合、膵炎の診断には血清アミラーゼが測定されます。しかし、血清アミラーゼはアルコール性、特に慢性膵炎の急性増悪では上昇しにくく、また発症後の異常値持続期間が最も短く、1〜2日程度で急速に低下します。さらに膵疾患以外でも異常高値となることがあり、特異度が低いという欠点があります。そこで、急性膵炎の初期診断では血清アミラーゼとともに膵特異性の高い血清リパーゼを測定します。ただし、高脂血症の場合には血清アミラーゼ、血清リパーゼが正常〜低値となることがあるので注意します。 急性膵炎の発症2日以降の晩期診断には半減期の長いエラスターゼ1やトリプシンが適します。特にエラスターゼ1は発症1週間後でも異常高値を示します。ところで、急性膵炎では死亡率の高い重症例を早期に識別し対応する必要があり、PLA2やトリプシンインヒビター(PSTI)は膵炎の重症度の判定に用いられます。 また、慢性膵炎の急性増悪時には急性膵炎と同様の膵酵素の上昇が認められますが、膵障害が進行した場合には血清トリプシンとPLA2が異常低値を示し、膵外分泌機能低下をよく反映するといわれています。 膵癌ではエラスターゼ1の異常値出現率が最も高く、CA19-9やSpan-1抗原との同時測定が適しています。
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