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質問
 結核菌感染診断補助検査QuantiFERON TB ゴールドプラス(QFT-Plus)について詳しく教えて下さい。

回答
Q-1:QuantiFERON TB ゴールドプラスはクォンティフェロンTBゴールド(従来法)とどう違うのですか?
  http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/216.html
 
Q-2:結核菌に感染してから、陽性になるまでの期間はどの程度ですか。
 感染から陽性になるまでの期間(ウィンドウ期)は、ツベルクリン反応と同様、8〜10週間といわれています。QFTの使用に関するCDCガイドラインでは、曝露直後にQFT検査が陰性だった最近の接触者には、8〜10週間後に再検査を行うことを推奨しています。
 
Q-3:陽性の解釈について教えてください。
 結核感染を疑います。しかし、最近の感染と昔の感染、あるいは潜在性結核(LTBI)と活動性結核の区別はできません(Q-6)。
 IGRA検査はLTBIでも活動性結核でも陽性になりますので、陽性=感染性ありや活動性結核ということにはなりません。陽性の場合は胸部X線や臨床所見を加味して評価する必要があります。もし活動性結核が疑われる場合は培養法や遺伝子検査法を行い確認する必要があります。X線や臨床所見で活動性結核の疑いが低い場合はLTBIである可能性が高く、この場合は活動性結核・感染性ありという可能性は低いということになります。
 また、ESAT-6およびCFP-10という結核菌に特異的な蛋白を抗原として使用しているため、BCGワクチン接種やほとんどの非結核性抗酸菌とは反応しませんが、一部の非結核性抗酸菌では陽性となることがあります(Q-7)。
 結核菌と非結核性抗酸菌との鑑別には、分離培養法、PCR法等により菌の同定を行う必要があります。
 
Q-4:陰性の解釈について教えてください。
 結核に感染していません。ただし、潜在性結核感染あるいは結核の可能性を否定するものではありません。
 ウィンドウ期での検査、高齢者や合併症などにより免疫機能が低下した状態、血液検体の不適切な取り扱いなどにより、偽陰性を示すことがあります。結核感染の可能性を示す臨床所見、病歴及び結核発症リスクに考慮し、総合的な判定が必要です。
 QFT-Plusの測定値が従来法(QFTゴールド)でいう判定保留域(0.1以上0.35未満IU/mL)であった場合、判定は陰性であっても、被験者集団の背景も考慮し、総合的な診断をお願いします。
 
Q-5:判定不可の解釈について教えてください。
 結核感染の有無を判定できません。必要に応じて再検査、あるいは他の検査を行う必要があります。
 QFT-Plusの判定不可には2種類のパターンがあります。
1.Mitogen(マイトジェン)値が0.5IU/mL未満の場合
 QFT検査には個人のIFN-γ産生能を調べる陽性コントロールが含まれます。Tリンパ球をマイトジェンという一種の細胞毒で非特異的に刺激し、その応答をみることで、Tリンパ球がIFN-γを産生する基本的な能力をチェックしています。
 マイトジェンに対するIFN-γ応答が低く(0.5IU/mL未満)、血液検体が結核菌抗原に対しても陰性反応を示す場合、検査結果は判定不可となります。このようなパターンは、リンパ球の不足、検体の不適切な取り扱いによるリンパ球活性の低下、マイトジェン採血管への不適切な注入・混和、あるいは免疫不全疑い、慢性疾患、低栄養状態、免疫抑制作用のある薬剤で治療中の患者における、免疫抑制の可能性を示唆しています。あるいは患者のリンパ球がIFN-γを産生できないことにより生じる可能性があります。
2.Nil(ニル)値が8.0IU/mLを超える場合
 Nil値は陰性コントロールであり、何も刺激しない場合にTリンパ球がIFN-γを産生しないかをチェックしています。Nilの高値は、非特異的なIFN-γの産生を意味し、結核菌抗原に対する反応との区別がつかないため判定不可となります。
 このようなことが起こる原因は、異好抗体(heterophile antibody)保持者、内因性インターフェロン分泌、最近の予防接種歴、リンパ球の無差別的応答(リウマチ熱、ウルシ皮膚炎などであり得る)、ウイルス感染など稀有で雑多な原因があるようです。
 よって、判定不可の理由が考えにくい場合は1ヶ月ほど期間をおいて再度採血を行い、再検査されることをお勧めします。再検査の結果も「判定不可」となった場合、他の診断法を考慮します。
 
Q-6:潜在性結核(LTBI)と活動性結核の鑑別は可能ですか。
 結核菌に感染すると発症の有無に関わらず体内のTリンパ球がその情報を記憶して外部から再び結核菌あるいはそれと同じ抗原が入り込むと血中Tリンパ球が免疫応答を起こします。活動性結核においてはCD8 の値が高めという報告はあるものの、現在の所QFT-Plus を測定することで活動性結核とLTBI を識別することはできません。陽性の場合は、臨床所見・X 線などの結果を踏まえ活動性結核かどうかを評価します。   ※潜在性結核とは結核菌に感染しているが結核を発病していない状態をいいます。
 
Q-7:結核菌以外の抗酸菌には反応しませんか。
 最も多いM.avium、M.intracellulareには反応しません。
 ESAT-6、CFP-10はすべてのBCG株やほとんどの非結核性抗酸菌に存在しませんが、M.Kansasii M.szulgai、M.marinum にはESAT-6、CFP-10の存在が知られているため、これらの感染によっても本検査が陽性となることがあります。結核菌と非結核性抗酸菌との鑑別をするには、分離培養法・PCR法等により菌の同定を行うことを、お勧めします。
 
Q-8:結核の既往歴があった場合、結果はどうなりますか。また、結核患者の治療効果判定に使えますか。
 「過去に結核症になったが現在治癒している」ということであれば、過去がどれくらい前なのかにより反応は変わります。
 最後の感染後QFT陽性は年間3.2〜3.5%位ずつ減衰(陰性化)すると推定されていますが、QFT-Plusを用いてのある研究で菌陽性結核患者の陽性率は治療開始前95%、3ヵ月後84%、6ヵ月後84%と3ヶ月以降は非有意であることが報告されています。さまざまな研究が行われていますが、現在のところはIFN-γ応答の治療に対する変化は治療効果の有用な指標にはならないとされているようです。
 
Q-9:食事や溶血の影響はありますか。
 食事の影響はありません。
 5%以上の溶血は偽陽性となることがありますので、再度採血してください。
 
〔参考〕
・現場で役に立つIGRA使用の手引き Ver.2(2015)
・QuantiFERON TB ゴールドプラス添付文書 2018年2月改訂(第1版)
・医療従事者のためのQ&A(株式会社キアゲン社) [PDF