CRCグループTOP > シー・アール・シー > よくある検査のご質問 >

質問
サルモネラ菌のO9って何ですか?また、菌種名を教えてもらえますか?

 以前サルモネラ菌の菌種名は、「Salmonella enteritidis(サルモネラ・エンテリティディス)」、「Salmonella typhimurium(サルモネラ・ティフィリウム)」などが用いられていました。
 
 現在、これらは「菌種名」ではなく、「血清型」という認識になっていますが、混乱するケースがあります。サルモネラ菌は血清型が菌種名として国際的に広く用いられていた時期があったからだと思われます。サルモネラ属細菌の菌体表面には菌体抗原(O抗原)と鞭毛抗原(H抗原)があり、O抗原とH抗原の組み合わせで多数の血清型に分けられます。サルモネラ属全体で2,500を超える血清型が知られています。O抗原とH抗原はコロン(:)で結んで表すので血清型がO9:g, m:-であれば、S. enteritidisと菌種同定されていました。
 
 現在、サルモネラ属菌は生物学的性状とDNA相関性にもとづいて、Salmonella entericaSalmonella bongoriの2菌種に分けられ、さらにS.entericaは6亜種に分類されています(表1)。菌種名表記は、S.enteritidisの場合、学術論文などでは、Salmonella enterica subsp.enterica serovar Enteritidisとなり、イタリック体で表記されている部分が菌種名となります。一般的にはH抗原まで行われない場合が多く、「Salmonella serovar O9」などの表記が用いられ、サルモネラ属菌であることとO抗原の血清型を示すことが多いと思われます。サルモネラ属菌の中でも重要なチフス菌やパラチフスA菌の菌種名も他のサルモネラ属菌と同じSalmonella entericaですが、必ず血清型で鑑別を行い、他のサルモネラ菌とは区別して報告が行われます。
 

〈参考〉
・臨床微生物検査技術教本 国立感染症研究所 感染症情報センター