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質問
院内で異なる患者から同一菌種の耐性菌検出。同じ菌株かどうか調べる方法は?

 MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)やVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)、CRE(カルバペネム耐性腸内細菌科細菌)、MDRP(多剤耐性緑膿菌)などの薬剤耐性菌は、院内感染の原因菌として感染管理の対象となっています。
 
 院内で発生したアウトブレイクは患者の不利益だけではなく、医療機関の費用負担も膨らませるため、大きな問題となります。
 
 同様の症状・徴候を示す感染症が、特定の病棟や診療科、同様の疾患を持つ患者に複数発生し、同一菌種が検出された場合など、院内感染によるアウトブレイクを疑いますが、それぞれの菌株が同一株か否かを調べる必要が生じることがあります。
 
 通常、菌の生化学的性状や薬剤感受性試験のパターンから同一菌株であることを疑いますが、明確な鑑別を行うためには遺伝子型(ゲノムタイピング)を調査します。
 
 遺伝子型による鑑別方法は、PFGE(パルスフィールドゲル電気泳動)法やMLST(Multilocus Sequence Typing)法、POT(PCR-based ORF typin)法、結核菌では、RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)法やVNTR(Variable Numbers of Tandem Repeats)法などが知られています。しかし、一般的検査室レベルまで普及していないのが現状です。
 
 アウトブレイク時などは医療機関の判断の下、必要に応じて保健所に報告、または相談することになります。院内感染やアウトブレイクを早期に発見するためにも、日常的に院内で発生する感染症の発生状況や検出菌の薬剤感受性傾向を把握しておくことが重要です。
 
〈参考〉
・木村凡「これからの細菌のゲノムタイピングとしてのMLST法」モダンメディア52巻7号2006
・和田崇之 長谷篤「結核菌の縦列反復配列多型(VNTR)解析に基づく分子疫学とその展望」結核 第85巻 第12号 2010年12月
・厚生労働省医政局地域医療計画課長通知「医療機関における院内感染対策について」(平成26年12月19日)