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質問
 

回答
 卵巣にできる腫瘍には良性のものと悪性のものがあり、85%は良性です。卵巣腫瘍はその発生する組織によって上皮性、胚細胞性、性索間質性の3種類に大別されます。卵巣悪性腫瘍(卵巣がん)の約90%は上皮性卵巣がんです。
 
 卵巣がんの罹患率は40歳代から増加し、50歳代〜60歳代がピークであり、年々増加傾向にあります。卵巣は骨盤内臓器であるため、腫瘍が発生しても初期症状に乏しく、診断時には約40〜50%が進行がんといわれています。
 
 卵巣がんが疑われた場合、問診および双合診(内診)、超音波検査、CT、MRIなどを行います。卵巣がんは良性の卵巣腫瘍との鑑別が難しく、手術をして採取した組織を顕微鏡で調べる病理検査を行うことで診断が確定します。
 
 卵巣がんの腫瘍マーカーにはCA125、CA602、CA72-4、CA54/61、STN、SLXなどがありますが、中でもCA125は高い陽性率を示し、診断や治療効果の指標として最も利用されています。しかし、閉経前の子宮内膜症や子宮筋腫、胸膜炎、腹膜炎による胸腹水の貯留、卵管炎などの良性疾患や炎症疾患でも上昇することがあり、他のがんの腹膜転移でも上昇します。
 
 参照「腫瘍マーカーCA125が癌以外で高値となるのはどんなときですか?
 
 一方、新しく保険収載されたHE4(ヒト精巣上体蛋白4)は卵巣がん患者で高値を示すとともに子宮内膜症などの婦人科良性疾患や妊娠などでは上昇することが少ないマーカーです。
 
 CA125とは相関性がなく、特徴の異なるCA125とHE4を組合せて使用することで感度・特異度が向上し、卵巣腫瘍が良性か悪性かを鑑別する有用な指標となることが期待されています。
 
表.卵巣がんの腫瘍マーカー
項目名 感度 特異度 卵巣がん以外で高値となる疾患・病態
HE4 53% 100% 高齢、閉経、喫煙
CA125 80〜90% 65% 卵管・子宮・膵・肝がん等、子宮内膜症、子宮筋腫、良性卵巣疾患、
胸/腹膜炎、妊娠、月経
CA602 60〜85%
CA72-4 50〜60% 胃・大腸・膵臓・乳・肝がん等、卵巣腫瘍、子宮内膜症、胆石症、肺炎、妊娠
CA54/61 40〜60% 子宮がん、子宮内膜症、良性卵巣疾患、妊娠
STN 40〜50% 卵巣嚢胞、呼吸器疾患、AB/B型、妊娠
SLX 40〜60% 肺・膵がん、呼吸器疾患、妊娠
※感度:卵巣がんに対する陽性率を示す
〔参考〕
・国立がん研究センターがん情報サービス
・松村謙臣、小西郁生:M.P. 34増、2017
・木村英三:産婦人科の実際64(8)、2015
・腫瘍マーカーハンドバック改訂版